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DATE
2020/01/15

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シェアツイート『高齢者の財産を守る成年後見人 意思決定支援も重要に』

認知症などのため自分で財産管理をする判断能力が低くなったり無くなったりした高齢者の方の財産の管理や福祉サービスなどの契約を、家庭裁判所が選任した後見人が行う成年後見制度の利用が、高齢者が増えていることなどが影響して増えてきています。

私も、高齢化が進んでいる県北の新見と美作で法律事務所を構えているので、40人近い方の後見人をしています。

後見人が選任されるきっかけとしては、施設入所をするために後見人が選任されるのが典型例の一つですが、高齢者が悪徳商法によって美術品などを数多く買わされてしまった場合にお金を取り戻したり、今後の被害の拡大を防いだりするために後見人が、選任されることもあります。

私も悪徳商法被害を受けた高齢者の後見人に選任された経験があり、この方は数百万円の被害を受けており、全額では無いですがまとまった金額の被害回復をすることができました。数社から被害を受けていたので、後見人ではなく、弁護士に事件として依頼すると弁護士費用もかかってしまいますが、成年後見人ですと、後見人として後見人報酬の中で動けるので、費用の方が取り戻せた金額を超えてしまうリスクが回避できます。その後の被害も予防できましたので、高齢者の悪徳商法被害対策にも成年後見制度は有用と考えます。

相続や生命保険金の受け取りなど、大きな財産を高齢者が受け取る際にも後見人が選任されることが多いです。この場合には、高齢者を支える家族がいる場合でも財産が多額ということで弁護士などの専門家が後見人に選任されることが多いです。

このように多額の財産がある場合にはご本人のためにどのように生かし、将来の世代にどのように残していくかを後見人だけでなく、ご本人を中心に家族や福祉の支援者と協議して財産を管理していくことが重要になってきます。このようにご本人は管理の対象ではなく、人生の主役として財産管理や居住場所などについてご自身で決めるのを支援すること(意思決定支援)の重要性が最近注目されています。

弁護士としては、業務の中で関わるほとんどのケースが過去の事故や事件、近隣トラブルなどの悪化した人間関係に関することなので、後見人として関わる意思決定支援などは、ご本人によりよく生きていただくための将来に向かっての支援なので、前向きな気持ちで取り組めるため他の業務とは違ったやりがいを感じています。裁判に出廷するために裁判所にいくより、ご本人に会いにご自宅や施設を訪問する方が楽しいです。

後見人に誰がなるのかという点ですが、申立人が選んだ候補者を参考にはしますが、最終的には、裁判所が選びますので、必ず希望どおりにいくわけではない点は注意が必要です。財産が多い方の場合や、交通事故の示談交渉を後見人が行う必要があるなど専門的知識が後見人に必要になる場合には、専門家が後見人となることが多いです。

最近は各地の社会福祉協議会のような法人が後見人になることも増えてきました。私も、新見市社会福祉協議会や美作市社会福祉協議会と一緒に同じ高齢者の後見人をするケースも増えてきました。この場合には、私が弁護士として、遺産分割の手続や交通事故の示談交渉などを行い社会福祉協議会が福祉の専門知識や地域のネットワークを生かして本人の生活面のサポート(身上監護)をするという役割分担もでき、ご本人にとってより良い環境を作ることができるので福祉と司法の連携が進んでいくことを願います。

この誰が後見人になるのか分からない点を解消するための方法として、判断能力が低くなった場合に備えて、ご自分が信頼できる方に将来の任意後見人になってもらうよう契約をしておく任意後見人制度もあります。任意後見人に関する契約は公証役場で締結する必要などがありますので、終活の一つとしてご検討されている方は弁護士にご相談ください。

以上のように成年後見制度は、高齢者の生活をさまざまな場面でサポートできる有用な制度ですが、高齢者の増加に比例しては利用が増えていないため2016(平成28)年に成年後見制度の利用の促進に関する法律が作られ、裁判所だけでなく国や地方公共団体も成年後見制度の利用促進を担っていくことになっておりさまざまな講演会などが各地で開催されています。1月31日には勝央町の勝央文化ホールで「第3回地域権利擁護ネットワークフォーラム」が開かれ、成年後見の利用促進の取り組みや意思決定支援について取り上げられ、私もシンポジストとして登壇しますのでご興味のある方はご参加ください。

大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長、18年4月から中国地方弁護士会連合会災害復興に関する委員会委員長。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」代表理事も務める。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

(2020年01月14日 15時00分 更新)