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2020/03/22

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成年後見制度 使い勝手良くして利用促進を

2020/03/22 05:00 読売新聞オンライン

認知症の高齢者など、判断力が不十分な人を支える成年後見制度の利用が伸び悩んでいる。運用の改善が必要だ。

 制度の利用者は現在、22万4000人で、約600万人と推計される認知症高齢者の一部にとどまる。理由の一つには、後見人の業務が財産管理を中心としがちで、日常生活を支援するものになっていないことがある。

 厚生労働省の有識者会議は今月、制度の利用促進に向けた中間報告をまとめた。本人の希望を可能な限りくみ取り、生活を守る。こうした視点を重視して、後見人が業務にあたるよう求めた。

 成年後見は、家庭裁判所に選任された後見人が、本人に代わって、預貯金の管理のほか、様々な契約行為を行う制度だ。

 本人の状況に応じて、介護や福祉、医療サービスの組み合わせを考え、適切なケアを受けられるようにすることが期待される。中間報告の方向性はうなずける。

 きめ細かな対応を実現するには、ふさわしい後見人を選任できるかどうかがカギを握る。

 昨年、選任された後見人のうち親族は2割にとどまり、残りは弁護士や司法書士ら専門職が多い。過去に親族後見人による財産の着服が相次いだ影響がある。

 ただ専門職は、身近な親族と比べて、日常生活の細かなニーズまで把握するのは難しい面もある。着服を防ぐ対策を講じつつ、専門職から親族に後見人を交代する柔軟な運用も必要ではないか。

 親族と専門職をペアで後見人に選び、生活支援は親族、財産管理は専門職が担うといった役割の分担も有効だろう。

 後見人に支払われる報酬のあり方を検討することも重要だ。

 家裁が決める報酬は、本人の財産に応じて月額2万~6万円となるのが一般的だ。利用者側からは、仕事の内容が見えにくく、何のために高額の報酬を払うのか分からないとの批判が根強い。制度利用を控える原因にもなっている。

 最高裁は昨年、業務の量や難易度に応じた報酬の算定方法に見直すことを全国の家裁に通知した。実態に見合った報酬となるよう、適切な判断が求められる。

 成年後見制度を支える自治体の役割も大きい。総合窓口となる自治体の「中核機関」では、利用を検討する親族の相談に乗ったり、身寄りがいない人の世話をする市民後見人を育成したりする。

 自治体や家裁、弁護士会などの専門職団体が連携し、制度の使い勝手を良くすることが大切だ。