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2020/01/26

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信用金庫の“成年後見制度”が拡大 高齢者の相続問題で注目

日刊ゲンダイDIGITAL        2020/01/23

少子高齢化が急速に進む一方、65歳以上の高齢者は3588万人と総人口の28%を超えた(内閣府2019年版高齢社会白書)。65歳以上の一人暮らしの高齢者は男性192万人、女性400万人で合計592万人(同調査)。高齢者が増えれば当然認知症患者も増え、12年に462万人だった有病者は20年(令和2年)に602万人、30年には744万人に上るとされている(厚労省認知症の人の将来推計)。

  高齢化社会で懸念されるのが、相続人のいない高齢者が増えてきていることだ。判断力が衰えた時、財産やその後の生活はどうなるのか。ちなみに相続人がおらず国庫に入る「国庫帰属財産額」は525億円(17年度)と、5年前の1・4倍に増えているのだから驚きだ。

こうした高齢者の支援でいま注目されているのが信用組合が行う成年後見だ。「一般社団法人 しんきん成年後見サポート沼津」は、沼津信用金庫を母体に本人に代わり、後見人としてのサポートを開始している。

成年後見制度は、認知症など判断能力が不十分になった人の代わりに財産管理や生活を支援する後見人を選定する制度。判断能力が不十分になる前に本人と支援の内容を決める任意後見と、判断能力が衰えた後に家族らが家庭裁判所に申し立て、裁判所が後見人を選定する法定後見がある。

 しんきん成年後見サポート沼津では現在、任意後見5件、法定後見21件を受託、契約している。
 「先々自分の判断力が衰えたら生活や、自分の財産はどうなるのか、“おひとりさま”の不安や悩みを持つ方の相談が非常に増えてきています」という同所の責任者・海田新也氏が、事業内容をこう説明する。

「預貯金や年金など、金融機関の名義変更から口座間の資金移動といった財産の管理が主です。任意後見は、将来の介護や施設への入居手配といった、身上監護の項目も被後見人と話し合い代理権目録を作成します。後見活動の開始は認知症と判断されてから行います」

自分が亡くなった後の財産について、自分の意思で財産をどうするか決めたいという人に対し、同所は“遺言書執行者指定”も同時に受けている。

「財産は長年暮らした自治体に寄付して少しでも社会に役立てたいという人や、残った財産はお寺に寄付するという方など、遺言で贈与する遺贈の相談も増えています」

 こうした信用金庫による後見人ビジネスについて経済評論家の荻原博子氏がいう。

「成年後見人全てが信用できる人だとは限りません。その点、信用金庫は地域に密着し顔見知りも多い。一人暮らしの高齢者が増え、家族関係もバラバラになり相続を放棄する人が増えるなか、信用金庫だから安心して財産管理などの相談ができるということです」

成年後見サポートの動きが全国の信用金庫に広がっている。

(ジャーナリスト・木野活明)