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2015年06月09日
身寄りがなく、判断能力が低下した高齢者らの財産を保護するため、成年後見制度に基づき、市町村長が後見人を立てるよう家庭裁判所に審判を請求する「首長申し立て」で、熊本市が2008年度に申し立ての相談を受けた8件について、実際に請求するまで平均2年5か月を要していたことが、市オンブズマンの調査で分かった。手続きの遅延は14年度まで続いた。市は「人手が足りずに時間がかかった」と釈明。相談から申し立てまでの期間を原則1年以内にできるよう担当職員を増員した。
後見人の選任を求める場合、家族が家裁に申し立てるケースが多い。ただ、身寄りがなかったり、親族と疎遠だったりした場合には、高齢者らが入所する施設などから相談を受け、首長が代わって家裁に申し立てる。
市高齢介護福祉課によると、首長申し立ての相談を受けると、担当職員が2親等以内の親族がいるかどうか戸籍調査を行い、親族がいれば、連絡を取って意向を聞く。ほかにも、高齢者ら本人の心身状態や資産を調べる。
市の担当職員は同課の2人だけで、相談を受けても、親族が多かったり、関係が疎遠だったりすると調査に時間を要したという。さらに調査の進捗(しんちょく)状況を報告する態勢が整えられておらず、上司も遅延を把握していなかった。
入所者の申し立て相談をした市内の介護老人保健施設が昨年、「相談から2年以上たっても申し立てがなされていない」とオンブズマンに市への苦情を伝え、多数の遅延が判明した。
オンブズマンの調査を受け、同課は昨年6月、首長申し立てを相談から原則1年以内に行うとする目標を設定。担当職員を9人に増員して集中的に調査を進めた。早期に申し立てが可能な事案や緊急性が高いものを優先的に調べた結果、14年度だけで、13年度以前に相談を受け付けた43件のうち、42件の申し立てを行った。さらに新規の相談50件についても半数の処理を終えたという。
同課は「高齢者の財産を守る重要な業務なのに、滞らせて申し訳ない。今後は迅速、正確にやっていきたい」としている。
【成年後見制度】 認知症などによって判断能力が十分ではない人の代わりに、後見人が財産管理や契約などを行う。弁護士や司法書士らが選任されることが多い。「首長申し立て」は、老人福祉法で、市町村長が特に必要があると認める場合、家庭裁判所に後見開始の審判を請求できると定めている。
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