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DATE
2015/04/01

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認知症の人の度を過ぎた買い物は無効にできるか

国民生活センターは、相談事例・判例として、認知症の症状により過剰に買い物をした客の売買契約が、意志無能力状態であったことにより無効であることを認めた東京地裁の判決について紹介した。

原告(認知症の消費者)は、有名百貨店内の特定の売場(ブティック)で約5年にわたって衣料品280点(1,100万円相当)を購入し続けた。購入時期は2006~2010年7月までであり、買い物を始めた2006年当時、原告は71歳で一人暮らしをしていた。

受診により原告がアルツハイマー型認知症と判明したのは2010年8月のこと。しかし、医師によると「発症は5年前」という診断だった。はたして、診断前にさかのぼって購入した商品は返却できるのか――。

原告の成年後見人である弟は、買い物が始まった2006年ころ、店側はすでに原告の判断能力が低下していることを知っていたか、少なくとも知り得べき状態にあったにもかかわらず、利益を得るために過剰に婦人服等を販売したのは社会的に許容される相当性を逸脱する行為であり、売買契約は公序良俗に反し無効であるなどと主張。ブティックが入っていた百貨店に対して売買代金約1,100万円の返還と、これに対する法定利息の支払いを求めた。

判決は、売買契約の一部については無効としたものの、店側の店員が、年に100回以上原告と会話していながら認知症を気づかなかった件に関しては、「公序良俗に反するとはいえない」とした。

今回の判決では、店員が客が認知症であることを認識することは難しいとしたが、今後、地域で認知症の人を支えることが当たり前になれば、とくに高額商品を扱う百貨店などでは、認知症の人の財産を保全する意味でも、店員が認知症について理解し対応力を身に着けることが要求される時代がくるかもしれない。