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新たに注目される「市民後見人」
浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
「市民後見人」に対する反応が悪い法曹界
ところが、市民後見に大きな壁が立ちふさがっており、関係者は頭を抱えている。後見人選定の権限を持つ裁判所である。
市民後見人を志す一般市民が地元の裁判所に申し立てると、なかなか色よい対応がないという。家裁によっては「専門職がいるNPOならいい」「自治体のお墨付きがあれば」「傷害保険に加入していれば」などの条件が提示されるという。親族後見ではないことだ。
こうした姿勢を、関西のNPO代表者は「弁護士や司法書士を含めて法曹界には一族意識が強く、よそ者を受け入れないという体質の表れ」と市民感覚の欠如を指摘する。事実、ある司法書士は「数十時間の研修を受けたとはいえ所詮、市民後見は素人です。よほど周囲にしっかりした支える態勢がないと裁判所は簡単に選任できないのでは」と、専門性が問題だと説明する。
東京のNPO関係者の間では「東京家裁は、社会福祉協議会が後見監督人に付いていないと認めてくれない」と囁やれている。後見監督人は、文字通り後見人活動の監督者だ。通常は、被後見人の財産が高額の場合にしか監督人が付かない。裁判所としては市民後見人だけでは一人前と見なし難いのだろう。特別扱いだ。
だが、家裁によって地域差がある。青森県内で11年度の裁判所への後見申し立ては230件で、そのうち市民が選任されたのは3件。千葉県内で同時期の申し立ては1863件あり、そのうち市民後見人はわずか7件。青森県並みなら24人になるはず。その千葉地裁は「親族も専門家も誰もなり手がいない場合に限って、例外的に市民後見人を選任している」と堂々と表明している。明らかに公平性に欠ける姿勢だ。
こうした壁に阻まれて、2013年に選任された市民後見はわずか167件に止まった。全部で3万4215件の0.5%である。
厚労省は、1月に発表した認知症ケアの長期戦略「新オレンジプラン」の中でも、市民後見を推進していくとした。「市民後見人養成のための研修の実施」を謳い、次いで「市民後見人の活動を安定的に実施するための組織体制の構築」「市民後見人の適正な活動のための支援」の整備を高らかに宣言した。だが、足元の法曹界の意識改革伴わないと絵に描いた餅に終わってしまいかねない。




![[画像]市民後見センターおおさかキャラクター](/images/common/character.gif)