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新たに注目される「市民後見人」
浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
家族に代わって普通の市民が後見人に
そこで注目されてきたのが市民後見。普通の市民が後見人になることだ。家庭裁判所が後見人として選定すれば誰でも後見活動ができる。特別の資格は要らない。
介護保険を日本より先に導入したドイツでは、日本の8倍の120万人の後見人がおり、市民後見人を数多く輩出している。「日常生活をできるだけ続けられるようにサポートするのが後見人の役目。仕事として事務的に対応しがちな専門職より生活感を共有できる普通の市民の方が適任」と評価する識者は多い。この3~4年の間に全国各地のNPOが行政や社会福祉協議会と連携し、研修を重ねて後見人を養成し始めた。
東京大学は既に6年前から独自に一般市民向けの後見人養成講座を開設しており、これまでに1500人が終了している。介護ヘルパーやケアマネジャー、退職直後の元サラリーマン、家族介護してきた主婦など多様な市民が数万円払って受講した。「高齢社会に欠かせない役割だと思った」と異口同音に話す。ボランティア精神で遠方から駆け付けた高齢者も混じる。
金融機関も手を挙げた。城南信用金庫(東京)など品川区内の5つの信用金庫がこの1月に一般社団法人「しんきん成年後見サポート」を設立し、成年後見事業に乗り出した。信金の退職者が後見人となって活動する。
国もことの重要性にやっと気がつき、老人福祉法第32条を改正して市民後見人育成に取り組み出した。同法に、後見人の育成や活用について「市町村は必要な措置を講ずるよう努めること」と盛り込み、2012年4月に施行した。
介護保険施行で始まった成年後見制度なので、本来は厚労省が旗を振って制度の説明をすべきだったが、法律上は民法の制度。このため、自治体や事業者向けの介護保険の制度説明会で厚労省は成年後見にほとんど触れて来なかった。縦割り行政の弊害によるものだ。
民法を所管する法務省は、とりたてて介護保険に関心があるわけがないので、こちらからも音沙汰なし。結局、「介護保険との両輪」は机上の空論となっていた。
重い腰を上げた厚労省が2011年度から始めたのは「市民後見推進事業」。後見人のなり手を専門職でなく市民に求めようと、地方自治体に助成金を投入してその育成事業に力を入れ出す。
初年度に西宮市、大津市、柏市など37市区町が名乗りを上げ、翌年は80市町、2013年度は128市町へと広がった。




![[画像]市民後見センターおおさかキャラクター](/images/common/character.gif)