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DATE
2015/03/02

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認知症の妻捜す、屋外で追体験劇 和気・駅前商店街、おじいさんと男性歩く(岡山市)

 認知症で町をさまよう高齢者を捜す「芝居」が、和気町の駅前商店街で上演されている。同町在住の介護福祉士で役者の菅原直樹さん(31)が、介護現場での体験などを元に脚本を作った。岡山市南区で実際に認知症の妻と暮らす岡田忠雄さん(88)が筋立ての鍵となる役で出演。観客は芝居と現実の境目を行き来する感覚を味わう。

芝居のタイトルは「よみちにひはくれない」。20年ぶりに故郷に帰ってきた男性が駅前で偶然、知り合いだったおじいさんに会う。おじいさんは、認知症になって町をさまようようになった妻を捜しているという。行きがかり上、手伝うことになった男性が思い出と共に町を歩き回った後に見つけたものは――。

 菅原さんは最初、屋内での芝居を考えていた。物語が進み、おじいさんの妻を捜すことになったところで舞台を外に移そうと思ったが、初めから屋外でやったほうがふさわしい中身だと考え直し、駅前商店街を舞台にすることにした。

 菅原さんは「老いと演劇」を考えるワークショップを町内で続けていて、商店街の人も参加していた。そうしたつながりを生かして商店街の協力を得て、警察からも道路使用の許可を取ることができた。

 出演している岡田さんもこのワークショップを朝日新聞の記事で読み、参加した一人。若いときから演劇好きで、「演じて認知症と向き合う」というところにひかれたという。

 同じ年の妻が十数年前から認知症になり、かみ合わない会話や暴れることに手荒な対応をすることがあった。このごろは目を離したすきに出歩くことも。自分の日常と重なる芝居を作った菅原さんから「出ませんか」と言われると二つ返事で引き受けた。

 せりふを覚えるのは苦にならないという岡田さんは「芝居にはまだ満足できていない。もう少しオーバーにやってみようと思う」と意欲を燃やす。

 菅原さんは「徘徊(はいかい)するとはどんなことなのか、徘徊する人に寄り添うとはどうすることなのか、を感じてもらえれば。できるだけ長く上演したい」と話す。

 場所の制約などから観客は15人まで。1月の初回の上演では、町内のほか岡山市内から家族の介護をしている人や介護福祉士、演劇関係者が見に来た。次回は3月29日。鑑賞料金は2千円(中・高生1千円、小学生以下無料)。問い合わせは「老いと演劇 OiBokkeShi」(0869・92・2313、月~金曜の午前10時~午後4時)。

(朝日新聞 2015年2月26日掲載)