ニュース・お知らせ
11月13日NHK
460万人に上ると推計される認知症の高齢者。
判断能力が低下して、業者から高額の商品を売りつけられるといったトラブルも多発しています。
高齢者の財産を守るうえで重要な役割を担っているのが「成年後見人」です。
判断能力が十分ではない人に代わってお金の管理などを行います。
14年前に始まった制度で、利用者は年々増え、去年末の時点でおよそ14万4000人が利用しています。
今後さらに高齢化が進み認知症の人も増えるとみられるなか、成年後見人が確保できるのかどうかという懸念が強まっているといいます。
社会部・石崎理恵記者が解説します。
高齢化で期待高まる成年後見人の役割
成年後見人は子どもやきょうだいなどの親族のほか、弁護士や司法書士といった専門職が主に担っています。
認知症の高齢者や障害者など判断能力が十分でない人に代わって、お金を管理したり、施設の利用契約をしたり、覚えのない契約を取り消したりするのが仕事です。
本人や家族などからの申し立てを受けて家庭裁判所が選任し、定期的に活動の内容を報告する義務があります。
高齢化にともなって成年後見人を必要とする人は増えています。
最高裁判所の推計では、16年後の平成42年には24万人が利用するようになるとみられています。
人口のおよそ4割が高齢者という新潟県佐渡市で成年後見人を務める弁護士の三橋昌平さんは、1人で11人の高齢者や障害者を担当しています。
いずれも子どもが島の外に出るなどして、頼れる身寄りが近くにいない人たちです。
このうち認知症の70代の女性のもとには、注文した覚えのない健康食品やインターネットの請求書が多数送られてきていました。
女性の主な収入は年金。
財産を管理できる身寄りはいません。
三橋さんが業者と接触し交渉したところ、こうした請求は現在は収まっているといいます。
懸念される“後見爆発”
期待が高まる成年後見人の役割。
しかし、佐渡市では後見人を必要としている人すべてに対応できていないのが現状です。
佐渡市が3年前に行った調査によると、弁護士など第三者の後見人を必要としているお年寄りや障害者は少なくとも50人いたのに対し、弁護士などが「対応できる」と答えた人数は29人にとどまりました。
一方、都市部では成年後見人を必要としているお年寄りが潜在しているとみられています。
東京・品川区では、ケアマネージャーや民生委員などの協力を得て、成年後見人が必要そうな人を見つけ出す取り組みを進めています。
通報を受けた区の担当者が訪れると、オートロックの向こう側に認知症の進行した高齢者がいたり、ゴミがあふれた家の中で1人、暮らしていたりするケースが明らかになるといいます。
品川区では身寄りのない高齢者に代わり、後見人をつける申し立てを行っていて、申し立てを検討している人は、ことしに入って70人に上るということです。
品川区の担当者は「成年後見のニーズは増えていく一方だと思います。行政側の取り組みをもっと拡充しないと対応しきれなくなるのではないかと思います」と話していました。
NHKが、道府県庁所在地の市と東京23区、それに政令指定都市の合わせて74の自治体を対象にアンケートを行ったところ、今後20年間の見通しについて「利用者が増えて後見人が足りなくなる」と答えた自治体が59%に上り、「後見人を確保できる」と答えたのは9%と1割を切りました。
成年後見を必要としている人は潜在的にはまだまだいて、将来後見人が圧倒的に足りなくなる「後見爆発」が起きると、現場や専門家の間では懸念が強まっているのです。