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秋田魁新報社「社説」
高齢化社会の進行に伴い、判断力が十分でない認知症高齢者の財産や権利をどう守るべきか。法的な後ろ盾として期待されるのが「成年後見人」だ。
成年後見制度は介護保険制度と共に導入され、今年15年目を迎えるが、利用状況は依然として低調。認知症高齢者が消費者トラブルに巻き込まれる事例も増えている。
そこで注目されるのが一般住民による「市民後見人」。県内では横手、湯沢の両市が育成に取り組んでおり、他の市町村も両市に学ぶなどして育成を急ぐべきだ。利用促進のため、制度の理解と啓発に一層力を入れることも不可欠である。
成年後見人は家庭裁判所が選任する。認知症高齢者などの不動産や預貯金といった「財産管理」、医療・介護サービスの契約や履行確認などの「身上監護」を行う。住み慣れた地域で高齢者が安心して暮らしていけるようにするのが狙いだ。
だが昨年末の利用者は全国で17万6千人、総人口の0・13%にすぎない。利用が普及しているドイツ(1・6%)に比べると、その少なさが際立つ。
専門家や関係者は、掘り起こされていない「潜在需要」が多いとの見方で一致。高齢化率が全国で最も高い本県も、状況はほぼ同じだろう。
その一方で、認知症や知的障害がある高齢者の消費者トラブルが全国的に急増。送り付け商法や投資詐欺などの被害は昨年度、1万件を超え、10年前に比べてほぼ倍増しており、制度の利用促進は急務だ。
成年後見人には親族のほか、弁護士、司法書士などが選任される場合も多い。県内には既に司法書士、行政書士を後見人として養成し、推薦する組織があり、社会保険労務士による組織設立の動きもある。これら専門職の人たちの間に、後見人の仕事を通じて地域に貢献する機運が広がることを期待したい。
ただし、専門職の人そのものが少ない地域もあり、後見人不足が懸念されていることも事実だ。その対策として育成が必要なのが市民後見人である。
国は2011年、市民後見人の育成を市町村の努力義務とした。これを受け横手、湯沢の両市は国のモデル事業として研修などを実施している。横手市の研修修了者は28人。このうち1人が同市で初めての市民後見人に選任され、今年5月から業務に携わっている。湯沢市でも育成は進むが、実際に市民後見人に選任された例はない。
横手市は昨年、県内初の成年後見支援センターを開設。制度利用や権利擁護に関する相談受け付けや市民後見人の育成研修、活動支援を行っている。これを契機に制度の周知がさらに進み、利用が増えることを望む。
今後、成年後見人を必要とする高齢者が増えるのは間違いない。後見人育成に向け、県と市町村、関係機関、団体が連携を強化する必要がある。
(2014/08/24 付)