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高齢者が「周りに迷惑をかけたくない」と考え、生前に死後の各種処理を決めたり、事前に契約する例が増えている。高齢化社会で「終活ビジネス」はもはや大市場だ。しかし、そこに悪徳業者が待ち構えていた!
「まず対象者が生きているうちは、『住』に関わる業者が囲い込む。施設入りを希望するのであれば、あっせんして、施設からキックバックを得る。近頃はサ高住(サービス付き高齢者専用住宅)も飽和しているエリアがあるし、高級施設は入居者の一般公募をしていないので需要はある。施設入りするなら自宅は賃貸に出すか、売却するかの提案ができ、ここで中古物件の仕入れに苦心する不動産業者が待ち構えています。一方で自宅に住み続けるなら、今度はバリアフリー化のリフォーム提案ができるんです」(S氏)
例えばS氏から聞いた例では、1700万円で売れる物件を1000万円で買い叩き、リノベーション後に2500万円で売却できたという。利幅は大きいのだ。
そして、囲い込みは死後も続く。生前に葬祭業者を指定させることもできるし、もし自宅で孤独死すれば、ここで特殊清掃や遺品整理業者も入ってくる。
「特殊清掃や遺品整理業者は、現場で出た廃棄物の処理関係で産廃業者と深い関係にあります。ヤクザと産廃も縁が深いので、この業界には最近、ヤクザOBによる起業も少なくない。夏場だと死後数日で50万、100万の世界。死後1週間なら数百万円というケースもある。定価はあってないようなものなので、儲かります」(同)
一方、「住」については、最後の物件処理の部分で大きな利益が出るため、不動産業者や、住宅ローンの債権を扱う弁護士事務所などが終活コンサルを主導しているケースもあるという。
こうした悪質な終活コンサル業者による囲い込みは、重大な問題だが、一方で高齢者のニーズに合致し、違法性はない。しかし、さらに大きな問題は、対象者である高齢者の判断力が認知症や病気などの理由で低下してしまった場合だ。ここに大きな法の穴がある。関東某所で不動産ブローカーを営むY氏は言う。
「通常、判断力を失った高齢者は、事前に第三者と『任意後見契約』を結ぶことで、財産管理などを委任しておくことができますが、その前段階で『財産管理委任契約』を結んでしまうんです。前者の場合、裁判所や公証役場が介在し、管理が適正かを判断する監督者も必要になるのに対し、後者はいずれも法的に不要なんです。資産持ちで、家族の縁も地域の繋がりも薄い高齢者が、この契約を結んだ後に判断力を失ってしまえば、あとはやりたい放題です」
【寺町東子氏】
弁護士・社会福祉士。弁護士法人きぼう代表。東京弁護士会「高齢者・障害者の権利に関する特別委員会」の委員長を務める。共著に『成年後見の法律相談』(学陽書房)などがある