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高齢者が「周りに迷惑をかけたくない」と考え、生前に死後の各種処理を決めたり、事前に契約する例が増えている。高齢化社会で「終活ビジネス」はもはや大市場だ。しかし、そこに悪徳業者が待ち構えていた!
相続や遺言書の作成はどうすればいいのか、認知症などで判断力を失ったとき、どうやって財産や我が身を守るのか――。急増するそんな高齢者の不安に応えるべく、最近にわかに増えているのが「終活コンサルタント」だ。
だが、その背後には、日本の個人金融資産の大半を抱えこむ高齢者を食い物にする“包囲網”が完成しようとしている。事情通の元暴力団組員S氏は言う。
「ヤクザとか詐欺・悪徳商法の金主が、終活コンサル業に投資する例が増えている。コンサル業に必須となる人材は、弁護士、行政書士や司法書士たち。本業では食えない弁護士、または司法試験は合格したけど弁護士登録できない人間はいっぱいいる。行政書士や司法書士も、バブル期の地上げブーム以来の共生者が少なくない。そういう人脈を集めるシステムは、数年前に流行った『借金相談コンサル(過払い金請求や自己破産などのサポート)』の延長線上にあるんだけど、そのノウハウを持った不良たちが、今度は設立の簡単な一般社団法人を冠にして、終活コンサルの法人を立ち上げるケースが増えてるんですよ」
慈善ではなく、あくまでビジネス。こうした悪質な終活コンサルは、パンフレットをポスティングしたり、訪問形式をとってターゲットの高齢者に接触する。自宅に上がりこみ、不安を抱え孤独な高齢者のカウンセリングをしながら、簡略なエンディングノートなどを一緒に作るなどして、高齢者の心の隙間に入り込むのだ。
こうした法人は、カウンセリングを通じて、マッチングを模索している。終活コンサルは、高齢者を対象とするあらゆるビジネスの“窓口”だからだ。
◆高齢者に関する「契約」
【見守り契約】
定期的連絡や訪問などによって、高齢者の安否や生活の不具合、健康状況などを確認してもらうために、第三者と結ぶ契約。認知症発症などを確認した時点で、任意後見人の申し出をし、高齢者の安全を守る
【財産管理委任契約】
財産管理や生活上の事務、契約ごとなどについて第三者に代理権を与える契約を結ぶ。代理権の内容は自由で、判断力喪失前に代理行為を行うことも可能。そして監督者を置く必要が法律で規定されていない
【任意後見人】
あらかじめ本人の指定する第三者と公正証書を交わし、判断力喪失後に後見してもらう契約だが、判断力低下前に代理行為を行うことはできない。代理行為については家庭裁判所が選任する後見監督人のチェックがある
【遺言】
死後の法律関係のことについて書き残すことだが、法定相続人(甥や姪などには相続権がない)がいない場合、悪徳業者によって「第三者に遺贈する」という遺言を書かされてしまうと、財産処理は業者のやりたい放題に
【寺町東子氏】
弁護士・社会福祉士。弁護士法人きぼう代表。東京弁護士会「高齢者・障害者の権利に関する特別委員会」の委員長を務める。共著に『成年後見の法律相談』(学陽書房)などがある