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2014/03/16

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成年後見人の不正、どう防ぐ 大半が親類、罪の意識薄い例も(1)

2014年3月14日朝日デジタルニュース

認知症などで判断能力が衰えた人の権利や財産を守る成年後見人。でも味方であるはずの後見人が、本人のお金を着服するなどのニュースを時々見かけます。いったい、なぜこんな不正が起きるのでしょう?

 

成年後見制度は2000年にスタート。親族らが申し立て、家庭裁判所が後見人を選ぶ。判断能力の度合いにより三つの類型がある。利用者は12年末時点で16万6289人で、前年より8・5%増えている。

「母親の後見人をしていた息子が、預金660万円を着服した」

「後見人として管理していた叔父の郵便貯金計1100万円を横領した」

朝日新聞の記事データベースで調べると、後見人の横領容疑事件は毎月のように記事になっている。最高裁によると、10年6月~12年12月までの2年半で、後見人による横領などの不正は計1058件見つかっている。被害総額は94億4千万円にのぼる。この9割以上が、親族の後見人による不正だ。

発覚すれば後見人は解任され、悪質なケースは刑事告発される。

成年後見センター・リーガルサポートの副理事長で司法書士の杉山春雄さんは、発覚分は「氷山の一角でしょう」と指摘する。

後見人は、本人のために口座を開いて生活に必要なお金を引き出したり、年金や家賃収入の受け取りをしたりもする。居住用の不動産をのぞき、本人の財産を処分することも可能だ。

制度に詳しい弁護士の寺町東子さんは「本人の権利を守るため、成年後見人には財産管理の幅広い代理権が与えられています。そのことを、自分の意のままに財産を処分してよいのだと思ってしまう人がいるのです」と話す。

ただ寺町さんによると、実際は自分が悪いことをしていると思っていないケースも目立つ、という。

「『いずれ自分が相続する分だから』『面倒を見ているんだから、その見返りで』といって、罪の意識もないまま、本人のお金を使ってしまうのです」

「本人のため」を徹底するのは、実はかなり緻密(ちみつ)な作業が求められる。ダウン症のいとこの後見人を務めた経験がある都内の男性(73)は「私は金融機関に勤めていたので何とかこなせたが、金銭管理の経験がない普通の人が厳密にやるのはかなり大変」と振り返った。本人の代理で役所や金融機関に出向く交通費、施設で一緒にとる食事代など、自分のための支出といとこのための支出を、すべて厳密に分けなければいけなかったからだ。「親族という私的な立場から、後見人という公の立場に意識を切り替えられるかどうかが問われるのだと思います」