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2014/02/16

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埼玉県内の成年後見人申し立て、5年で1.3倍 制度の拡充急務

埼玉新聞 2月12日配信

認知症の高齢者などの財産管理を行う「成年後見人」を付けることを申し立てた件数が、県内では5年間で約1.3倍に増えている。高齢化社会を迎え、制度の拡充が急がれており、自治体などが講座を開いて市民後見人の養成を進めている。その一方で、後見人のサポート体制などの課題も出ている。

3年前のある日、県内のデイサービス施設で職員が、利用者の男性の異変に気付いた。「資産が減っているのではないか」。男性は認知症で要介護度3。娘は2人いるが同居しておらず、1人暮らし。調べてみると預金は大幅に減っており、知人が引き出しているようだった。施設は専門機関に相談し、司法書士の成年後見人を付けたという。

認知症や障害で判断能力が低下した人の権利や財産を守る成年後見人。県内で、高齢者などに成年後見人を付けることを申し立てた件数は、2008年が1258件だったが、13年には1687件に増加している。

成年後見人には、社会福祉士や司法書士、弁護士などの専門家が就くことが多い。増加する需要に対応して、県内11自治体で、専門職以外の人を対象に「市民後見人養成講座」を開講している。

 さいたま家裁で、市民後見人を選任する例は12年まで1人もいなかったが、13年には志木市の専門職以外の男性が後見人に選任された。普及はまだこれからだが、今後拡充が期待されている。

社会福祉士などで構成する「権利擁護センターぱあとなあ埼玉」(さいたま市中央区)では、成年後見人についての相談や紹介を行っている。相談は年間230件ほど寄せられ、後見人の受任件数は572件に上る。

運営委員長を務める山本進さん(66)は「後見人をするに当たって悩ましいのは、被後見人にとって何が幸せなのか考えること」と話す。

被後見人の多くは認知症を抱えた高齢者。在宅サービスを受けながら独居を続けている被後見人も、いずれは施設の入居が必要になる。ケアマネジャーなどと協議して入居しても、認知症が進んだ高齢者はなぜ自分が施設にいるのか分からず、パニックを起こすこともあるという。

被後見人のケースはそれぞれ違う。その一方で、後見人も多種多様化しており、対応に苦慮することも。山本さんは「後見人を引き受けた人が孤立せず、フォローアップできる環境整備が必要」と話している。

■成年後見人

認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不自由になった人の財産管理や介護サービスの契約、遺産分割の協議を行う人のこと。

被後見人にはどのような保護、支援が必要かなどの事情に応じ、家庭裁判所が選任する。後見人には親族、法律・福祉の専門家、福祉関係の公益法人などが選ばれる。