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DATE
2018/04/07

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成年後見人がついてからの遺言書作成

成年被後見人が財産の分与について口に出すようになった。

正式な分与という言葉ではないが、遺産相続人ではない者への遺贈行為だ。

東京大学での成年後見市民講座でそのような話しがあり、医師が認定する一定の条件で出来ることと認識していた。

ネットで検索してみると、

1 成年被後見人が遺言を作成する方法

成年被後見人遺言を作成することは可能です。

しかしながら、法律上以下の要件が必要とされています(民法973条)。
①事理を弁識する能力を一時回復したときであること
②医師2名以上の立会があること
③立ち会った医師は、遺言者が遺言作成時に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名押印をすること

遺言の方式としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれの方式でも行うことができます。

秘密証書遺言の方式で作成する場合には、上記③の医師による付記及び署名押印は、封紙に行う必要があります。

なお、上記のような特例は、成年被後見人の場合だけなので、被保佐人被補助人の場合には、意思能力さえ有していれば、上記のような立ち合いがなくとも、遺言は有効です。

2 成年後見人による遺言作成はできない

遺言は身分行為であり、成年後見人が代理して遺言を作成することもできません。

3 口がきけない者や耳が聞こえない者の場合

成年被後見人によっては、遺言者が、口が聞けなかったり、耳が聞こえない場合があります。
このような場合でも、自筆証書遺言を作成することは可能です。

また、公正証書遺言を作成することも可能です。
通常の公正証書遺言であれば、「遺言者による口授」や「公証人による読み聞かせ」が必要ですが、前者については、「通訳人の通訳による申述または自書」に、後者については、「通訳人の通訳」に代えることができます(民法969条の2)。

4 文字が書けない者の場合

遺言者が文字が書けない場合もありますが、このような場合、自筆証書遺言を作成することは難しいですが、公正証書遺言を作成することは可能です。

5 成年被後見人が遺言を作成する際の注意点

高齢で遺言を作成すると、後に相続人間で被相続人の意思能力の有無が問題になることがあります。
成年被後見人の場合には、①意思能力を有していたというだけでは遺言は有効にならず、②医師2名以上の立会いと③医師による付記と署名押印がなければ無効になってしまう点には注意が必要です。

6 成年被後見人でない場合への示唆

成年被後見人でない者が遺言を作成する場合、医師の立会等は不要です。
しかしながら、上記のとおり、高齢で遺言を作成する場合、後に相続人間で意思能力をめぐってトラブルになることもあります。
そこで、仮に成年被後見人とはなっていなくとも、医師による立ち合いや、医師による付記(や診断書)を得ておくことで、後のトラブルを回避することも可能となります。